act.22『お耳でぐりゅぐりゅ』『お耳でぐりゅぐりゅ』ママは、おいらがおうちに来たとき、猫のことをよくわかっちゃいなかった。 だって、おいらがのどをごろごろ鳴らしていたら、具合が悪いんじゃって心配したくらいなんだ。 それで、病院で熊に怒られたママは、次の日から猫の本を買ってきたリ、借りてきたり忙しそう。 熊からもらった本だけじゃ心配だったみたいだ。 ママが難しい顔をしたり、ニコニコしたり、百面相しながら読んでいるとき、おいらはママのひざの上で丸くなっていた。 おいらは時々ご本を覗き込んで見た。 たくさんの猫が載っているけど、動かないからつまんない。 おいらは本にがりがり爪を立てた。 『ああ~ッ!こにゃん駄目ッ!』 ママに取り上げられちゃった。 おいらはしっぽをぴんとたて、ママのおひざを飛び降りた。 おんもはいい天気なのになあ。 ママってばいつまでご本読んでいるのかな? ママが買ってきたのはご本だけでなかった。 猫トイレ、トイレ砂、キャリーバッグ、爪きり、猫歯ブラシ、猫ブラシ、猫シャンプーに猫リンス、爪とぎ、えさ箱・・・まだまだある。 おいらが嫌いなものまで買ってきた。 『こにゃ~ん。おいで~。』 ママが猫なで声で呼んでいる。 でも、おいらは知ってる。 ああいう声で呼んでいるママにちかづいちゃ危ないって。 前に、のこのこママのところにいったら、爪をぱちんって切られちゃったんだ。 『こにゃ~ん。』 ママってばまだ呼んでいる。 聞こえないよぉ~だ。 おいらは知らん振りして窓の外を見ていた。 でもママは、おいらがぶらぶらしっぽを振っていたら、いつの間にかこっそりとおいらの背後に近づいていた。 『こにゃん捕まえたッ!』 にぃ~ッ! ママってばずるいよ! 『今日はね。こにゃんのお耳を掃除してあげるからね。』 おいらの耳がぴくぴくした。 お耳掃除かぁ。 お耳掃除はちょっぴりくすぐったいけど、ママが柔らかいガーゼをおいらのお耳に突っ込んで、グルグルッてすると、おいらふにゃ~んって眠くなっちゃう。 桃はおいらと違って、お耳掃除は嫌いなんだ。 ママが、ふわふわのついた細長い棒を持ってきて、お耳掃除するよっていうと、いやいやってお耳をふさいで逃げている。 でも、おいらは平気だよ。 だから桃よりいい子でしょ? おいらはおとなしくママに抱き上げられた。 でも、ママ・・・ダッコするときおいらをぶら~んてするのはやめて欲しいな。 おいら胴長になっちゃうよ。 おいらはママのお膝でごろごろ言った。 ママの優しい声が子守唄みたい。 ママは丁寧においらのお耳を拭いていく。 おいらはふにふに、ママのお膝に頭をこすり付けたりした。 ぴちゃ~ん! 突然おいらのお耳の穴に冷たいものが垂らされた。 おいらはあわてて跳ね起きようとしたけど、ママにしっかり押さえられていた。 ぴちゃ~ん! ママはおいらのピンとたった耳を、まるで耳の穴に突っ込むようにしてぐいぐいマッサージ。 でも、おいらのお耳に垂らされた、冷たいゼリーみたいなのがぐりゅぐりゅって気持ち悪いよ。 おいらはママの手に爪をかけて抵抗したけど、そうだった、昨日ママに猫爪きりで切られたばかりだったよ。 ママはくるんっておいらをひっくり返すと、反対の耳にもぴちょ~ん!ぐりゅぐりゅって。 『これはね。お耳のダニを退治してくれるクリーナーよ。』 ママは自慢げに言うけど、おいらこんなんだったら、ダニでかゆかゆのほうがいい。 もう一人でも、後ろ足でお耳バリバリできるもん! それからママが、 『お耳掃除しよう~。』っていうたび、 おいらと桃は競争するみたいに、ママから急いで逃げ出すんだよ。 act.23『回転寿司』 に続く |